川沿いを散策すると、黒色と白色の鳥が尾羽を振りながら歩いている様子を見かけるかもしれません。
その鳥とは、恐らくセグロセキレイかハクセキレイでしょう。
もしその鳥が、白色の眉をもっているとしたら、それはセグロセキレイです。
今回はそんなセグロセキレイの生態を詳しく紹介していきます。
セグロセキレイの生態:入門編
セグロセキレイ | Japanese wagtail | Motacilla grandis | スズメ目セキレイ科セキレイ属
レア度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆★(1/10:身近で見られる)
見られる季節:1年中
見られる場所:日本全国
見られる環境:見通しのよい水辺を特に好む
餌:昆虫食
全長は21cmで、白黒の体がトレードマークです。
主な生息地は河川や渓流といった川沿いですが、市街地でも時折見かけます。
餌は昆虫に依存しており、1年中てくてくと歩きながら昆虫を探します。
日本はこの地球上でユーラシア大陸の東部に位置する「極東」と呼ばれる地域に位置します。
そんな極東域のみに、セグロセキレイは分布しているのです。
具体的には、セグロセキレイは日本と朝鮮半島のみで繁殖をしています。
セグロセキレイの特徴
ハクセキレイとの見分け方とは?
セグロセキレイの特徴は、頬が黒く、白い眉毛があることだと言えます。
名前は「セグロ(背黒)」セキレイなので、背中が黒いことが特徴だと考えられますが、実はハクセキレイのオスも同様に背中が黒色です。
正しく言えば、背中の黒色の面積がハクセキレイよりも広いセキレイと言ったところでしょうか。
また、ハクセキレイの頬は白色ですので、頬の色は簡単な識別点になるでしょう。
韓国に進出中
古い図鑑をみると「セグロセキレイは日本固有種」とされていますが、それは誤りです。
1966年、韓国では1つがいのセグロセキレイが繁殖をはじめました。
それ以来、朝鮮半島でセグロセキレイは繁殖を行い続けています。
一方でロシアや台湾でも記録がありますが、これは迷行と呼ばれる迷って飛んでいってしまった!という場合の記録であり、
分布域としては日本と朝鮮半島の2つのみが挙げられるでしょう。
セグロセキレイの生態
夫婦で子育て
5–7月に繁殖を行い、1シーズンに2–3回の繁殖を繰り返します。
縄張りを構え、同種セグロセキレイのライバル達だけでなく、
餌資源を巡るライバルであるハクセキレイなども縄張りから排除することが知られています。
縄張り意識の強い鳥類なのです。
巣はオスとメスが共同でつくり、巣が完成すると4–5日後に4–7個の卵を産みます。
卵は16日ほどでかえりますが、そのあいだの抱卵はオスとメスの両方が行います。夫婦の絆も強いのです。
15日ほどで巣立ち、大人たちが作る集団ねぐらで夜は過ごすようになります。
てくてくと縄張りのなかを歩きながら、昆虫などの無脊椎動物を採食します。特にガガンボなどを好むようです。
驚くことに、ときに小魚をも雛に与えるようです。食べられるのでしょうか?!
男の子を優遇した子育て
セグロセキレイの繁殖生態は詳細に日本において研究がなされていますが、
親鳥は巣立ったあとの雛鳥を自身の縄張りのなかに留まらせ、日中は一緒に行動することが知られています。
そして一緒に行動しながら、親鳥は自身がしとめた昆虫を雛鳥に渡すことが知られています。
そのいわゆる「甘やかし」行動は、主にオスの子供に向けられるようです。
一方で、メスの雛鳥はオスの雛鳥に比べて早い段階で甘やかされなくなるとか。つまり、メスの雛鳥は早々と親の縄張りから追い出されてしまうのです。
その理由として、縄張りを構築するのはオスの役割であるため、
将来強くなり、立派に縄張りを構築するためには、大きく強く育ってもらう必要があるわけです。
一方メスはそうした縄張りに向かう立場であるので、甘やかし行動が少ないのだと考えられています。
そうすることによって、親からすれば、自身の遺伝子を後世に残すチャンスを増やしているのです。
ハクセキレイとの種間関係
セグロセキレイとハクセキレイは姿だけでなく、その生態までもが類似しています。
実際に、ひらけた見渡しのよい水辺を好むため、生息環境を巡るライバルといえます。
さらに、両種とも昆虫が主な餌ですので、餌を巡るライバルでもあります。
そうした理由から、両種は時に喧嘩をするような対立関係にあるといえます。
もっと詳細に見ていくと…?
生息環境をもっと詳細にみていくと、ハクセキレイとセグロセキレイは互いに好む微環境に違いが見られるようです。
具体的には、セグロセキレイは水田や河川から市街地までひろく見られるのに対し、
ハクセキレイは住宅地、工業地など都市化が著しい場所を好むようです。
この知見は1980年代後半にえられましたが、それ以降ハクセキレイは日本における分布を広げているので、現在その状況はまた異なっているかもしれません。
歴史的な側面
セキレイの仲間は、奈良時代の時点では「いしたたき」として知られていました。
この名前は、尾を振る様子からつけられたんだとか。
この時点では、ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイは区別されていなかったと考えられています。
江戸時代になるとそれら3種は区別され、異なる名前で呼ばれるようになり、セグロセキレイは「せぐろせきれい」と呼ばれるようになりました。
鳴き声
さえずりは早いテンポで「ツツチージージュイ」と複雑です。
地鳴きは「ジジッ ジジッ」とにごった声を出します。
一方でハクセキレイは「チチッ」キセキレイは「チチン」と澄んだ声で鳴くため、簡単に識別できます。
鳥博士のメモ
セグロセキレイの模様の変異が1970年代までは認識されていましたが、
最近では世界の鳥類の知見が蓄積し、それらの変異がカザフスタンなどの中央アジアに生息するハクセキレイの1亜種メンガタハクセキレイであることがわかってきました。
メンガタハクセキレイは日本で滅多に観察できる鳥ではないため、なかなか知見が収集されなかったのも納得ですね。
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