2003年からフジテレビ系列で放映された「Dr.コトー診療所」は、沖縄県の架空の島「志木那島」で
俳優の吉岡秀隆さんが演じる外科医が慣れない土地で奮闘する話を描いた物語です。
2022年12月には、続編を描いた映画が公開されることになりました。
そんなDr.コトー診療所の撮影が行われた島が、沖縄県の与那国島です。
与那国島は日本の最西端に位置する島です、なんと台湾までの距離(約100km)が沖縄本島までの距離(約400km)よりも近いのです。
そうした異端な位置にある島であるがゆえ、与那国島は日本ではなかなか見られない生き物が発見されます。
今回は与那国島を合計で20日滞在した当ブログ管理人が、与那国島でのバードウオッチングを紹介します。
探鳥地としての与那国島
与那国島 | 沖縄県 | 面積29平方キロメートル
2022年7月時点の探鳥地情報のまとめ
アクセス:石垣島から飛行機(1日3便, 35分間)または石垣島からフェリー(火曜日と金曜日に1便, 与那国島から石垣島に戻る便は水曜日と土曜日に1便)
島内の移動:レンタカーまたは原付が絶対的におすすめ。自転車も借りられるが、移動が厳しい。
宿泊地:ホテルはあるがそれほど綺麗ではないので、民宿がおすすめ。
食事:コンビニはないが、商店がある。お惣菜などは乏しい。夜ご飯は市街地の飲み屋で食べるのが美味しい。
おすすめの滞在期間:3日-1週間くらい居られれば何かしら珍鳥に出会えるかもしれない。1泊2日では短い。
バードウオッチングの印象:珍鳥の密度は高くないが、驚くほどの珍鳥に出会えることがある。
与那国島の魅力は、なんといっても珍鳥です。
これまでこの島では、日本で初めて記録されるほど珍しい鳥が数々見つかってきました。
例えば、バンケン、チャバラオオルリ、クロヒヨドリなどが例としてあげられます。
そうした珍しい鳥が見られる理由は、台湾に近いことや、ユーラシア大陸に特に近い場所であるためでしょう。
そういうわけで、いつ何が現れるかわからないワクワク感と、沖縄に来ている感で疲れなど忘れてしまうでしょう!
食には困らないが、レンタカーは必須
アクセスは、はっきり行って悪いです。本州などから直通便はなく、必ず石垣島を経由する必要があります。
島内には複数箇所に商店があるほか、ご飯屋さん(定食や沖縄そばなど)もそれなりにあるので食に困ることはないでしょう。
ただし商店の閉店時間も早いので、素泊まりの場合には注意しましょう。
最も注意するべき点(なめていると痛い目をみる点)は、移動手段です。
離島だし体力があるから自転車でいいか!としてしまうのが最も大きな失敗点でしょう。
与那国島はとにかく起伏が激しいため、絶対にレンタカーまたは原付バイクが必要です。
現地の方の生活の邪魔にならないような駐車場などに駐車し、そこから徒歩で探鳥を楽しむのがよいでしょう。
島内の探鳥スポット
島全体が珍鳥が見られる探鳥スポットですが、特に注目すべきエリアを何箇所かピックアップして紹介します。
Dr.コトー診療所の、いわゆるコトー先生の診療所は島の南側に位置します。
主に宿泊する場所は北部(地図の市街地)になると思いますので少々の移動が必要になりますが、とても綺麗なので訪問すると良いでしょう。
ちなみにコトー先生がドラマでよく海を眺めている湾では、クロサギがよく餌を探しています(笑)
市街地南部の農耕地
ではでは、まずは北部から、東側、南側、西側と時計回りに探鳥地を紹介していきます。
市街地の南側には、水田とその周辺部を取り囲むように放棄地とヨシ原が広がっています。
この草丈の高い草原こそ、珍鳥が潜む可能性が高い環境なのです。
管理人が秋に訪れた際にはこのエリアでタカサゴクロサギとチフチャフを発見しました。
特にヨシキリ類(ヤブヨシキリなど)、クイナ類(シマクイナなど)、ウグイス類(チョウセンウグイスなど)、ムシクイ類(チフチャフなど)、ホオジロ類(シマノジコなど)が期待できる場所かと思います。
また、農道が多いため現地の方の移動や作業の邪魔にはならないように十分気をつけて探鳥しましょう。
ここより東側には疎林が広がっており、オウチュウ類などが期待できます。
インビ岳の農道
与那国島の最高峰である宇良部岳の西側、島の真ん中より下側にインビ岳という山があります。
そのインビ岳の山腹を東西に貫く農道の東側は発達した森林に囲まれており、樹上性の珍鳥を狙う機会が多くあります。
このエリアの目玉はなんといってもムシクイ類です。またブッポウソウやハチクイといった樹冠を好むような鳥類も潜んでいるかもしれません。
またカッコウ類の鳴き声に耳をすませば、バンケンやセグロカッコウといった思わぬ珍鳥を発見できるかもしれません。
一方、農道の西側の環境は比較的ひらけており、セキレイ類を探すのに適しています。
管理人は秋に訪れた際、インビ岳の農道でコムシクイ、ブッポウソウ、セジロタヒバリ、マミジロタヒバリ、ハイイロオウチュウなどを観察しました。
クルマエビ養殖場
Dr.コトー診療所のちかく(すこし西側)には、クルマエビ養殖場があります。
近くの海に出るための駐車場に車をとめ、クルマエビ養殖場の周囲の道路を歩いてみましょう。
他の場所で珍鳥が見られなくとも、この場所では本州ではまず見られない鳥たちが高確率で見られます。
それはアジサシ類です。エリグロアジサシやベニアジサシ、運が良ければオオアジサシなどが見られるかもしれません。
また管理人はこのエリアでツバメチドリも目にしています。
久部良ミトウ湿原
フェリー乗り場周辺の住宅地からほどなくして姿を現す湿地が、久部良ミトウ(またはミトゥ)湿原です。
直径約200mほどの沼があり、その周囲を農耕地や疎林が囲んでいる環境で、さまざまな珍しい水辺の鳥類が見られます。
沼の周辺はアカモズ(主に亜種シマアカモズ)の密度も高いため、例えばカラアカモズといったアカモズのレア亜種を探しても楽しいです。
期待できる鳥類としては、アオショウビンやヤマショウビンといったカワセミ類、レンカク、サギ類、ジシギ類などでしょう。
なお、沼までは距離が遠いので、鳥を探すうえで望遠鏡の使用はマストだと思います。
北牧場
島のいたるところに牧場があり、その全てが見どころともいって良いですが、
そのなかでも環境の構造に多様性が高いように感じた北牧場をピックアップしました。
オープンな環境を好む様々な鳥が高密度で生息しています。
主要な鳥はおそらくツメナガセキレイですが、レアなセキレイ類に大きな期待ができます。
またタイワンヒバリである可能性があるので、ヒバリ類も1個体ずつしっかり観察すると良いでしょう。
管理人はこのエリアでセジロタヒバリ、コマミジロタヒバリ、マミジロタヒバリ、ヒマラヤアナツバメ、オオチドリを見ました。
もしかするとそうした牧場では、レアなノビタキ類やヨシキリ類も期待できるかもしれません。
与那国岳
最後に紹介するのは与那国岳です。
与那国岳周辺には「満田原森林公園」という公園が設置されており、森のなかでのバードウオッチングを楽しめます。
管理人の特におすすめのスポットでもあります。
ムシクイ類やヒタキ類が豊富で、さまざまな鳥が樹冠を飛び回っており、1日滞在しても飽きることはないでしょう。
またヒヨドリやハトの密度も高いため、国外に分布するヒヨドリ類や、ハト類にも期待がもてます。
管理人はこのエリアでキタヤナギムシクイ、キマユムシクイ、ベニバトを観察しました。またコムシクイの密度が最も高いのもこのエリアだと感じます。
紹介した鳥以外にも、コホオアカ、カラムクドリ、ホシムクドリ、ギンムクドリ、ベニバト、アカガシラサギ、アカハラダカなどを観察しました。
与那国島の珍鳥数はすごいのです。
島で生きる鳥たち
島で繁殖する鳥たち
与那国島では、琉球らしい鳥たちが何種も繁殖しています。
やはり見たい鳥は、ズアカアオバト(亜種チュウダイズアカアオバト)、キンバト、ミフウズラ、オオクイナ、ベニバトなどでしょう。
このうちミフウズラは運転中に見つかったりし、見づらい種ではありません。
オオクイナも夜に声を聞けるでしょうし、夜のバードウオッチングに出れば姿を見られるかもしれません。
ズアカアオバトも樹上を注意深く探していけば、1日で見つかるはずです。
問題はキンバトです。決して個体数が多くは感じず、見られるかはかなり運次第のような印象を受けます。
ベニバトに関しては与那国島で繁殖している可能性について議論がなされているようですが、
実際のところ繁殖しているかは怪しく、その数は島外から渡来し滞在している個体数によるという印象で、決して繁殖していて普通に見られるとは思わないほうが良いです。
ヒヨドリ(亜種タイワンヒヨドリ)については、本当に島中どこにでもいるので、じっくりとたくさんの個体を観察することができるでしょう。
航路情報
石垣ー与那国航路
石垣島から与那国島に移動する1つの手段がフェリーです。
週に2度しか運行していないため、なかなか利用しずらいかもしれません。が、無理をしてでも利用したいところです。
なぜなら、与那国航路は多数のカツオドリを間近で観察することができるためです。
船に驚いたトビウオを狙って、カツオドリ等は船に近寄ってきます(ちなみに、Dr.コトー診療所のドラマの冒頭部ではトビウオの映像が流れます)。
そのほとんどがカツオドリですが、稀にアオツラカツオドリも船の周辺を飛び回ります。白いその姿の神々しさは言葉には言い表せません。
また水平線に目を移せば、シロハラミズナギドリ、アナドリ、ヒメクロウミツバメ、アナドリ、クロアジサシなどを観察することができます。
特にアジサシ類は与那国島が近づくにつれて可能性が高まるので、最後で集中を切らさないようにしたいですね。
鳥博士のメモ
あまりに本土から遠くアクセスも良いとは言えないため、
「琉球で鳥を見るなら、石垣島か西表島にしよう」「珍鳥をみるなら日本海側の離島にしよう」
と考えてしまうかもしれませんが、思い切って与那国島に行くことの魅力が伝わりましたでしょうか。
Dr.コトー診療所のロケ地「与那国島」は、日本初記録となるような珍鳥と出会える鳥の楽園だったのです。
ぜひぜひ本ブログの情報を活用し、与那国探鳥を楽しんでいただければと思います。
また、もし日本初記録といった種を見つけた場合にはできる限り写真を記録し、報文や論文として報告することをおすすめします。
正式に認められれば、日本の野鳥図鑑のページを1枚増やすことができるのです。ロマンがありますね。
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