イチゴ色の可愛らしいベニマシコは、数少ない身近で見られる赤い鳥です。
季節限定の種ではありますが、日本国内でも北海道では夏の鳥、本州では冬の鳥と認識が大きく異なる鳥だとも言えるでしょう。
この記事では、ベニマシコの生態を詳しく紹介し、その赤さや形の謎について迫っていきましょう。
ベニマシコの生態と特徴:入門編
ベニマシコ | Long-tailed Rosefinch | Uragus sibiricus (Carpodacus sibiricus) | スズメ目アトリ科ベニマシコ属
レア度:☆☆☆☆☆☆☆★★★(3/10:適切な時期に自然がある場所で探すと見つかる)
見られる季節:夏(北海道)冬(本州以南)
見られる場所:低地(主に標高1,000m以下)の疎林
見られる環境:水辺に低木林が隣接した環境や、密なやぶを好む
餌:穀物・昆虫食
ベニマシコは16–18cmと体長はスズメより大きいですが、16–26gとスズメより体重は軽めです。
それもそのはず、ベニマシコはその体の3分の1とも言えるほど長い尾羽を持ちます。
その特徴はなんといっても赤い体ですが、メスはベージュ色で地味な姿をしています。
すこし似ているオオマシコはずんぐり体型をしており、翼の白い帯(大雨覆の先端の白色)と風切羽(三列風切)の白斑が目立たないことから識別できます。
繁殖している姿を見たいなら北海道にいきましょう。繁殖期のベニマシコはイチゴ色ではなく、真っ赤でとても綺麗です。
ベニマシコの特徴
年齢と性別によってかわる色
ベニマシコは全ての個体が赤いわけではありません。
成熟したオスのみがイチゴのような赤い姿をしていますが、
若いオスや、メスはうっすらとしたピンク色か、ほとんどベージュ色をしています。
逆に言えば、老齢のメスと若いオスの色を赤色の度合いで識別することはかなり難しいのです。
赤色になるプロセス
さまざまな鳥たちは、羽の生え変わりによって体の色を変化させます。
例えばほとんどのシギ・チドリ類は繁殖前に換羽し(=羽を生え替わらせる)、美しい姿に「変身」します。
ベニマシコはこの「換羽による変身」ではなく「羽をぼろぼろにして変身」し、イチゴ色になります。
まず、ベニマシコは毎年秋に新しい羽になります。寒い冬を越えるためには、フワフワのダウンが必要なのです。
生えたての頃のベニマシコの羽は、先端はベージュ色、根本はピンク色です。
季節が進み春が近づくにつれて、羽毛どうしが擦れ合い、次第に先端がすり切れてきます。
そうすると、次第に羽毛のピンク色が体の表面に表れるのです。
こうした変身はオオジュリンやホオジロなども行いますが、春先に寒波がきてしまうと命の危機に陥る危険性も秘めています。
ベニマシコの生態
繁殖
ベニマシコは北海道の疎林で4月上旬頃に繁殖をはじめます。
繁殖は一夫一妻で行われ、つがいが1つの縄張りを持ちます。
青緑色に黒色の斑点が少数ある卵を3–6卵を産み、抱卵は主にメスが行います(オスも稀に行います)。
ちなみにこの時期、メスはとてつもなく”強気”になるのだとか。
雛は11–12日の抱卵後に生まれ、その13–14後に巣立ちます。
家族生活
巣立った雛たちは、しばらくのあいだは兄弟で群れを作り行動します。
8月下旬頃までは疎林のなかで生活しますが、その後牧草地や草原へ移動し、豊富にある穀物を食べながら冬に備えるようです。
10月頃までにはほとんどの個体が繁殖地を去り、越冬地である本州各地へと渡っていきます。
餌
ベニマシコは繁殖期に昆虫を盛んに利用します。
飛びながら昆虫を追いかける姿が頻繁にみられ、本州でベニマシコを見慣れている人からすると異様な姿に見えるのもこの時期です。
冬は主に植物の穀物、春先には新芽も餌とします。なんとカタツムリを食べた記録もあるようです。
小型のキセルガイといったカタツムリであれば、ベニマシコの小さな嘴でも食べられるのかもしれません。
ベニマシコの分布
東洋の鳥ベニマシコ
ベニマシコの分布は中国、カザフスタン、ロシア南東部、モンゴル、朝鮮半島、そして日本に分布します。
ユーラシア大陸のほとんどの場所では通年見られる留鳥です。
分布図をご覧ください(リンク)。北海道よりも北の地域でも周年見られるのです。
5亜種が知られていますが、2020年代の遺伝子解析結果によって亜種の再考が望まれています。
名前の由来
「べに」という言葉は説明不要でしょう、紅色を示します。
「ましこ」というのは猿を指します。猿の顔ように赤い姿をした鳥が「マシコ」と呼ばれるようになったのです。
つまり和名の意味を直訳すれば、紅色をした真っ赤な色の鳥 となるわけです。納得ですね。
鳴き声
澄んだ声で「フィー ピー ぺリッ ピリーピツッ」などと美しく細やかにさえずります。
地鳴きは多くの場合、とても小さく細い声で「フィ」や「ピッポ」と鳴きます。
鳥博士のメモ
ベニマシコは赤い鳥の代表格とも言えますが、他の代表格とも言えるオオマシコやハギマシコと違ってとても簡単に見られる鳥です。
地鳴きを覚えることで、特に本州では冬にすぐに見つけることができるはずです。
また、その生息環境の雰囲気も頭に入れておくことで「なんだかここはベニマシコが好きそうだなぁ」という感覚がつかめれば、冬にこっそりとベニマシコが潜んでいることに気づけるかもしれません。
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