日本列島は春と秋に、さまざまな渡り鳥が通過する中継地です。
本州・九州といった日本の本土はもちろんのこと、その周辺にある離島でも多くの渡り鳥が見られます。
そうした時期のみに、特に離島で多くの個体が発見されるのがシロハラホオジロです。
今回はそんなシロハラホオジロの生態を詳しく紹介していきます。
シロハラホオジロ入門編
シロハラホオジロ | Tristram’s Bunting | Emberiza tristrami | スズメ目ホオジロ科ホオジロ属
レア度:☆☆☆☆☆★★★★★(5/10:渡りの時期に離島などで見られ、数が少ない)
見られる季節:春と秋の渡りの時期
見られる場所:主に離島
見られる環境:草地ややぶに潜む
餌:穀物・昆虫食
シロハラホオジロは15cm、体重約15–20gの小型のホオジロ類です。
日本では繁殖期にはまず見られず、越冬する個体を観察する機会も非常に乏しい本種。
主に5月や10月頃の渡り時期に日本で観察する機会が増えますが、それでも見つけるのは非常に難しいでしょう。
舳倉島、飛島、見島、対馬といった日本海側の離島を訪れれば、観察することができるかもしれません。
シロハラホオジロの特徴
カシラダカとはまるで異なる模様
シロハラホオジロは名前の通り白い腹が識別点かと考えるかもしれませんが、それは誤りです。
シロハラホオジロは顔の特徴的な模様のパタン(特に目の上下にある白色のライン)が特徴です。
顔に白色のラインがあることはオスとメスに共通し、オスは他種と見間違える心配はありません。
一方でメスはカシラダカに似ます。シロハラホオジロの識別点としては
1. 上尾筒(尾羽のうえにかさなる羽)の赤色味が強いこと
2. 顔の白色ラインがはっきりと太いこと
3. お腹に黒色の斑点があること
が挙げられます。両種は似た環境にいることも多いので、もし同時に見られたしっかりとその姿形を見比べてみましょう。
シロハラホオジロの生態
分布域
シロハラホオジロは中国東部やロシア南東部(ウスリー地方)で繁殖します。
繁殖を終えると、冬は中国の中部や南部で越冬します。
この際には、おそらく多くの個体は大陸内(モンゴル東部)を移動しますが、少数の個体が日本海上を飛び、日本海の離島で記録されるのだと考えられています。
また日本よりも朝鮮半島での渡りの記録が多いことから、日本は主な渡りルートではないことが強く示唆されます。
繁殖・越冬生態
シロハラホオジロは繁殖地に到着すると、日本のホオジロのように縄張りを確立します。
その際には、針葉樹林、広葉樹林、混交林などかなり幅広い環境で縄張りが構築されるようですが、特にナナカマドの木が好まれるようです。
繁殖は5月から7月にかけて行われ、薮のなかにつくった巣に、4–5個の卵を産みます。
約2週間の抱卵はメスによってのみ行われます。繁殖成功度は高いと考えられていますが(平均3羽が巣立つというデータがある)、詳しい研究がなされていません。
越冬地では密なやぶのなかで、小さな群れを作って生息することが知られています。
餌
繁殖期には昆虫類(コウチュウの仲間など)を主に採食します。
この傾向は渡りの時期にも見られ、春先の離島では小型のバッタや、鱗翅目の幼虫(イモムシ)を採食する様子を観察することができるでしょう。
冬は植物の種子や穀物を採食します。
鳴き声
渡りの時期に聞く声のほとんどは地鳴きです。
「チッ」という音がカシラダカよりも鋭く、クロジの地鳴きに近いような音です。
カシラダカの群れからクロジっぽい声が聞こえたら、双眼鏡で個体を探してみましょう。
観察したことはありませんが、渡り途中にぐぜる(ボソボソとさえずる)可能性もあるのでさえずりを覚えておいて損はないでしょう。
さえずりもクロジに似ていますが、より高い声でなきます。
鳥博士のメモ
シオハラホオジロの見つけ方のコツは、むやみにひらけた環境で探さないことでしょう。
森のなかに1つだけ畑があるような環境や、放棄された畑跡のような場所で餌を探す小鳥を双眼鏡で一羽ずつ観察するのが良いと考えています。
多くの個体はカシラダカだとおもいますが、根気強く探していけばシロハラホオジロに出会えるはずです。
それほどまでに見つけにくいシロハラホオジロですが、昭和初期の時代には、飼鳥市場に一定の流通量があったようです。
朝鮮半島で捕まえられた個体なのか、日本で見つかった貴重な個体であったのか、その真相を現代で知ることはできないのかもしれません。
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