2024年11月から国立科学博物館ではじまる特別展「鳥」は、我々バーダーにとって待望の企画です。
なぜかって?それはあの国立科博において、初の鳥に関する特別展なのです!!
今回のテーマは、「ゲノム解析」で解き明かす鳥の「系統」…。でも待って、ゲノム、系統ってなに?
ざっくりとあらかじめ学んでおけば、特別展「鳥」の展示をきっと倍楽しめることでしょう!
この記事では、特別展「鳥」を楽しむための
基礎知識をわかりやすく紹介していきます!
ゲノムってなに?遺伝子との違いは?
ゲノムってカタカナで言われても、わからんですよね。
ジュラシックパークで博士が秘密裏に進める実験、トウモロコシの品種改良… などなどどれも実は「ゲノム」が関係しています。そしてゲノムを解析することは、鳥の秘密に迫る1つの鍵とも言えるのです。
カタカナの専門ワード嫌い…。
D!N!A!
ゲノムとは簡単に言うと、ある鳥(例えばムクドリ)のすべての遺伝情報です。
この遺伝情報は、鳥(もちろん私たちも)の設計図とも言えるでしょう。ここに記された情報に従って、文字通り体が作られます。
そして遺伝情報は、DNA上に塩基と呼ばれる暗号(A, T, G, Cの4種類)?の組み合わせによって記されています。
そして、嘴の形を決める遺伝子(ムクドリならATTGCCTTTTCのような。※塩基配列はテキトーです)、羽の色を決める遺伝子を決める遺伝子(ムクドリならCCCTGGACのような。※上同)が鳥たちの姿形を決めています。
この塩基配列のすべて(つまりゲノム)を解析することで、鳥類学者は鳥たちの進化の歴史、姿形の秘密など、いろいろな謎に迫ることができるのです。
遺伝子改変は、この塩基配列を人の手で変えることを言います。
系統ってなに?
なんとなくゲノムはわかったと思いますが、新しいワード、しかも日常ではより目にすることがない謎の単語「系統」の謎は未解決です。
系統を理解するためには、「進化」の概念の理解が不可欠です。
生物は長い時間をかけて、共有の祖先から多種多様な種へと「進化」してきました。
そして鳥の「系統」を調べることは、超簡単にいうと、種間の「進化の歴史」の似てる度合いを知ることと言えると思います。…どういうことでしょうか?
配列を種間で比較してみると…?
最近まで共通の祖先を共有していた(1種だった)2種は、そうでない種よりも、遺伝子の配列が一般に似ています。
そして塩基配列を調べることによって、その進化的な似ている度合いを、他の様々な指標よりも正確に知ることができるのです。
塩基配列の似ている度合いを樹木のように示した図(上図の右下)が、系統樹です。
スズメとホオジロは進化の歴史が似ており、ウミネコはその歴史がだいぶ違うようだ、ということが一目でわかるわけです。
ちなみにこの系統樹という概念の着想に至った1人の科学者として有名なのが、あのダーウィンです。
鳥+ゲノム+系統の見どころは?!
さて先ほど、塩基配列を調べることによって、その進化的な似ている度合いを、他の様々な指標よりも正確に知ることができる、と述べましたが、ここがとても面白いところです。
他の様々な指標… その1つは鳥の姿形なのです!
こいつらが「仲間」?!
むかしむかし、というより最近まで、ワシタカの仲間と、ハヤブサの仲間はその姿がとてもよく似ているので、共通した進化の歴史を歩んできたのだろう、と考えられてきました。
しかし!塩基配列を分析した結果、なんとなんと、ハヤブサの仲間と進化的な歴史を共有しているのはワシタカではなく、インコの仲間であることがわかったのです。
そう、ハヤブサとワシタカは「他人の空似だった」のです。
ハヤブサの祖先(インコっぽいやつ)から肉食の種が進化した結果、その肉食インコは、同じように肉食であるワシタカの仲間と姿形がそっくりになったと考えられるのです。
遺伝子解析がなかったら、今もきっと、
両者は系統的に近いと思われていたことでしょう。
日本鳥学会の分類も大いに変更されました。
地球の歴史に触れられるかも
最近のゲノム解析の発展は目覚ましく、想像もできないような研究ができます。
例えば、ある島にいつなんど鳥が入植したのか、数万年前の個体数(個体群サイズ)はどれくらいかを推定することができたりします。
最近は、ヤモリが日本にやってきた歴史(リンク)などがゲノム解析によって明らかにされました(昔の個体数なども推定されています)。
鳥では研究例を知りませんが… そのような最先端の研究内容も紹介されるかもしれません。
大昔の鳥の生きる様子が垣間見えるかも?!
続報に期待しましょう!!
まだまだ情報が開示されたばかりで、具体的な展示内容などは発表されていません。
10月になり、最新情報が続々と公開されています!
本記事の予想通り、インコとハヤブサの話題は取り上げられるようですね。
絶対、行きます!
展示構成も公開!
展示の構成が公式ホームページで公開されています。かっこいいホームページです。
第1章:鳥類の起源と初期進化:恐竜から鳥への進化でしょう。ワニとの系統関係にも注目かも?
第2章:多様性サークル:ゲノム解析によって描かれる系統樹です。ここでは間違いなくJetz et al (2012) Natureの研究が参照されるでしょう。論文の図2(Figure 2)を見てみてくださいね。
第3–7章:それぞれの鳥類の目について
第8章:鳥たちとともに:現代の鳥類が直面する環境問題や保全についてです。
剥製を見ながら、いろいろな鳥たちの生態や進化を理解できる
貴重な機会です!我孫子市鳥の博物館を超える、超ボリューミーな
鳥展示になることが期待されますね!!
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