書店には様々な図鑑が溢れ、どの図鑑の質が高いのかを判断することは容易ではありません。
今回は野鳥観察を20年以上続けている研究者が自信をもってオススメする図鑑を
❶識別部門(入門4冊) ❷生態部門(入門4冊) ❸長く使える部門(3冊) ❹写真撮影部門(1冊)❺漫画部門(1冊)に分けて紹介します。
識別部門(入門編)
どんな図鑑を選べば良い?
図鑑を選ぶ際のポイントは掲載種数、情報の正確さ、イラストor写真の図鑑どちらを買うかです。
掲載種数については、初学者は100–200種ほどが掲載されている図鑑を購入するのがオススメです。
というのも、日本で見られる鳥の半数以上は、身近で簡単に見られる鳥ではないからです。
情報の正確さについては、名の売れた著者であっても意外に掲載されている情報に誤りが多い…なんてことがあります。今回紹介する図鑑は情報が正確かつわかりやすいものを集めました。
イラストor写真図鑑どちらを選ぶかは、どの人も間違いなく悩む点でしょう。
僕のオススメは、野外に持ち歩くためにイラスト図鑑を1冊、家でじっくり見るために写真図鑑を1冊買うことです。
イラスト図鑑と写真図鑑は、以下のようなメリット・デメリットがそれぞれにあります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
イラスト 図鑑 | ・情報がシンプルで見やすい。 ・識別点がイラストに示されているので、野外での確認が用意。 | ・(日の光の影響などはイラストに反映されないため)色味が実物と異なる場合がある。 ・地味な種やメスでは、イラストから種識別することは難易度高め。 |
写真 図鑑 | ・実物と写真を見比べて識別できる。 ・じっくり眺めることで、種の特徴を把握できる。 | ・識別点などの情報が見辛い。 ・掲載されている写真のなかには、写りがイマイチなものがあったりする。 |
識別部門4位:街・野山・水辺で見かける野鳥図鑑
図鑑の種類:写真|掲載種数:330種
この本の最大の特徴は、検索のしやすさです。
鳥を生息環境順に並べ、さらに姿勢やシルエットから、目の前に現れた鳥が何者かを検索できます。
加えて、経験豊富な著者の「一言」が各ページにあり、勉強になること間違いなしです!
識別部門3位:新・山野の鳥 & 新・水辺の鳥
図鑑の種類:イラスト|掲載種数:山野の鳥160種、水辺の鳥150種
20年以上に渡って初心者バーダーに愛されている良書が3位にランクイン!
僕自身も初心者のときには、野外に出かける度にこの図鑑を開いていました。
現代では更に発達した初心者向けの図鑑が幾つかありますが、持ち運びのしやすさや(厚さ5mm)、情報の密度は1位といってもいいでしょう。
識別部門2位:くらべてわかる野鳥
図鑑の種類:写真|掲載種数:330種
文庫タイプの図鑑です。写真に直接識別点が記載されているので、写真図鑑のデメリットを感じさせない良書です。
各種の生態などの記述は少ないですが、入門書としては非常にオススメの1冊と言えるでしょう。
識別部門1位:野鳥手帳
図鑑の種類:イラスト&写真|掲載種数:242種
おしゃれな表紙に惹かれて手にとってみると、内容の重厚さに驚かされる「野鳥手帳」。
掲載種数は他のオススメ図鑑と比較すると少ないですが、はっきり言って身近で使うには十分すぎます。
この本は、オス・メスだけでなく、幼鳥などを様々な鳥について詳細なイラスト付きで紹介している点や、生態についての情報も豊富にあり、家で眺めてもワクワクすること間違いなしです!
そして識別点なども綺麗なイラスト上にわかりやすく示されており(案外大事な情報である)分布図までついています。イラストだけじゃなく写真も掲載!初学者向けの本では、この本以上におすすめの本はありません。
生態部門(入門編)
生態図鑑の魅力
ほとんどの図鑑は主に野鳥の特徴・識別方法を紹介していますが、
バードウオッチングの楽しみは識別だけではありません。そう、行動観察だったり生態を知ることも奥深いのです!
ここでは、そんな日常のバードウオッチングを更に楽しくしてくれる4つの図鑑を紹介します!
生態部門4位:バードリサーチ生態図鑑
図鑑の種類:主に写真|掲載種数:約150種(2020/11/1時点)
NPOバードリサーチがウェブ上で運営する「生態図鑑」が第4位にランクイン。
内容自体は、その鳥を研究する専門家などが抜擢されて執筆されたものなので、とてつもなく詳しいです。
ただし入門編とは言えないかもしれませんが、野鳥観察の奥深さを知ることができるに違いありません!
バードリサーチの普通会員(年会費2000円)であれば、追加で年間500円を支払えば読み放題です。
申し込みは、生態図鑑メインページからどうぞ!!
生態部門3位:探す、出あう、楽しむ 身近な野鳥の観察図鑑
図鑑の種類:写真&漫画|掲載種数:約161種
この鳥はこんな行動をするのか!だったり、こんな不思議な側面があるのか!という気付きを与えてくれる良書です。
掲載種数は控えめですが、そのぶん身近で会ったことのある種をそれぞれ詳細に紹介しています(ページ数は384ページですから、1種あたりの割り当てが多いことがわかりますね)。
文字だけだとイメージしづらいなぁ…という方もご安心ください。漫画も掲載されていて、夢中で読んでしまうでしょう。
生態部門2位:鳥類学が教えてくれる「鳥」の秘密事典
図鑑の種類:イラスト|掲載種数:それほど多くない。
2024年度版の更新時に新たにランクイン!!種の生態図鑑という文脈ではここで示した他の本に劣りますが、
野鳥とはなんなのか?という疑問に対して、正確で信頼できる研究をベースとして答えを与えてくれる良書です。
どんな生態をもつのか?どんな歴史を辿ってきたのか?どんな問題を抱えているのか?などについて、最新の研究事例がたくさん紹介されています。
著者は台湾の研究者であり、研究者であるトリハカセもこんなわかりやすい文章で、こんな面白い内容を伝えられるのかと感嘆しました。研究者にも、バードウォッチャーにも読んで欲しい1冊です。
生態部門1位:鳥のおもしろ私生活
図鑑の種類:写真&漫画|掲載種数:約86種
この項目ダントツの1位といってもいいかもしれない「鳥のおもしろ私生活」は、1997年に出版されたちょっと古めの本。
しかし、プロ中のプロのピッキオのレンジャーの方々が時間をかけにかけて観察した「独自の」観察結果などが面白く紹介されており、森の鳥が好きな人は間違いなく引きこまれるでしょう。
各種ごとに1枚の漫画のような挿絵があり、とても愛を感じ、各種の生態の要点を掴んだものになっています。
また、「野鳥観察のいろは」も本の後半で紹介されていますが、そちらも必見です。そしてきっと軽井沢に行きたくなるはず…笑
長く使える部門
中級者以上では必読?
ここまで紹介した本は掲載種数が300以下と、身近ではない鳥について知るにはちょっと物足りません。
ここからは、身近な鳥については一通り識別ができるようになり、珍しい鳥たちとの出会いも楽しみたい方へおすすめの図鑑を紹介していきます。
これらの図鑑を本がぼろぼろになるまで読み込めば、日本にいる鳥の識別は(シギ、ミズナギドリ、カモメ、カモといった難易度の高いグループ以外)およそ迷いなくできるようになるでしょう!
※ ここで紹介する図鑑は、生態に関する記述よりも、識別に焦点を当てたものを紹介しています。
長持ち部門3位:山溪ハンディ図鑑 7 新版 日本の野鳥
図鑑の種類:写真|掲載種数:約520種
愛用者が多いであろう「山渓」のハンディ図鑑。写真もなかなかに多く、ページをめくるたびにワクワクするでしょう。
本書や「日本の野鳥590(平凡社)」が、2010年代初めごろにはオススメランキングトップと言えたかもしれませんが、それらの図鑑と勝るとも劣らない素晴らしい図鑑が2010年台中盤以降出版されました。
長持ち部門2位:日本の野鳥650
図鑑の種類:写真|掲載種数:650種
日本で現在最も売れている野鳥図鑑は「日本の野鳥650」でしょう。
その特徴はなんといっても掲載種数の多さで、日本語で書かれた野鳥図鑑でこの種数を凌ぐ本は数えるほどしかありません(それらの本と比べて、こちらの方が情報は正確だと感じます)。
分布情報や基礎的な識別点がしっかりと述べられており、どの種についても驚くほど綺麗な写真が掲載されています。
長持ち部門1位:日本の鳥550 山野の鳥・水辺の鳥(改訂版)
図鑑の種類:写真|掲載種数:550種(山野:349種、水辺:288種)
お待たせしました、日本の鳥550の登場です。
識別を極めたいバーダーのバイブルとも言える本書、おそらくベテランバードウオッチャーや研究者も相当に読み込んだ過去があり、現在も愛用しているのでは…?
1種につき何枚も掲載されている写真は、オス・メスだけでなく、さまざまな状態(年齢など)について掲載しており、
またその写真も絶妙。識別に関する解説文も端的かつ詳細で、読み込めば識別の深みにはまること間違いなしです。
写真撮影部門
写真撮影部門唯一のオススメ:図解でわかる野鳥撮影入門
写真撮影は、機材の紹介だったり、撮り方だったりのみにフォーカスが当たることが多く、野鳥観察好きからするとちょっと残念だったりします。
しかし、この「図解でわかる野鳥撮影入門」は野鳥の生態にもフォーカスし、
カメラが好きな方々にもバードウオッチングを楽しんでもらえるきっかけを与えてくれる良書です。
(この記事では簡単に言うと)身を隠して撮影することのメリットなどを紹介しており、僕は読んでいて嬉しくなりました。
漫画部門
漫画部門:とりぱん
この記事の最後には、鳥の漫画を紹介します。
鳥の漫画なんて大衆に人気あるの??と思われるかもしれませんが、既に30巻が出版されており、15年以上に渡って連載が続いています。
この記事でわざわざオススメする理由は、とりぱんは鳥たちの生態をうまく捉えているから、バードウオッチングをした後に読むととても面白いのです!
庭にやってきてはあたりを見渡す「つぐみん」の可愛さを、ぜひ皆さんも紙面で味わってみてくださいね。
コメント