日本で繁殖するモズの仲間はモズ、アカモズ、チゴモズとスズメより一回り大きな身体をしています。
しかしユーラシア大陸には、その1.5倍以上も体が大きく、体重は2倍以上もある超大型モズが生息しています。
そのなかでも最も大きな種として「オオカラモズ」の存在感は図鑑でも異彩を放ちます。
そんな超大型モズは、本当に稀に日本でも観察されることがあるのです。
オオカラモズ入門編
オオカラモズ | Chinese Gray Shrike | Lanius sphenocercus | スズメ目モズ科モズ属
レア度:☆☆★★★★★★★★(8/10:毎年のように数羽が記録される)
見られる季節:冬
見られる場所:日本各地(西日本に多い)
見られる環境:農村地や開拓地などの見渡しの良い環境
餌:肉食(主に昆虫)
オオカラモズは全長30cm、体重が90–100gにもなる超大型のモズ類です。
ちなみにヒヨドリは全長28cmで体重60g、ツグミは全長24cmで体重90g、キジバトの全長33cmで体重200g程ですから、いかに大きいかイメージできるかと思います。
ひらけた環境にある見晴らしの良い場所から、モズのようにあたりを見渡し、餌になる動物を探します。
その姿はモズにしてはあまりにも大きく、猛禽類とは体型が異なるため、見つけた場合には不思議な感覚に陥ること間違いなしです。
オオカラモズの生態
分布域
オオカラモズは中国北部から北東部にかけて、北朝鮮で繁殖し、中国東部や韓国で越冬します。
そして日本は稀に秋から冬にかけて「迷行」するオオカラモズの行き先と言えます。
その多くの場合、オオカラモズは日本で越冬し、春には大陸に向けて移動します。
迷行する個体数は西日本に多い傾向がありますが、埼玉県や石川県、北海道でも記録があります。
オオカラモズは日本全国で観察できる可能性があるのです。
生息環境
河川敷、牧草地、耕作地などのひらけた環境を好みます。が、越冬期には水田や水辺にひそむ場合もあります。
中国では開けた草原や半砂漠にも生息することが知られています。
繁殖・越冬生態
オオカラモズの繁殖は4月頃開始されます。つまり越冬地を3月頃には出発するのです。
卵は5–9個産み、メスが16–17日間抱卵します。そして、約3週間ほどの育雛期間を経て、巣立ちを迎えます。
巣立ったあとも数週間にわたって雛は親から餌を貰いながら生活し、独り立ちします。ときに2ヶ月にわたって巣の外での育雛は続きます。
越冬は個体ごとに大きな行動圏(行動するきまった範囲)で行います。
大型のスズメ目ハンター
オオカラモズは枝などから飛び降りて餌を捕獲します。ときに8mもの高さから飛び降ります。私も電線から飛び降りて餌を捕獲する姿を観察したことがあります。
繁殖期の餌生物のほとんどが昆虫です。コウチュウやコオロギの仲間が餌の中心です。
また稀に脊椎動物では鳥類やネズミなど哺乳類、カエルやトカゲも餌として利用され、冬にはネズミの割合が増加します。
そして、オオカラモズも捕獲した餌を枝や有刺鉄線につき差して「はやにえ」を作ります。
「はやにえ」は晩冬や春先にかけて利用され、オオカラモズの栄養となるのです。
オオカラモズの特徴
オオモズとの違い
オオカラモズと類似する種としては、オオモズが挙げられます。
しかし、以下の識別点さえ覚えてしまえば迷うことは少ないでしょう。
1. オオカラモズは明らかに大きい。オオモズ(約25cm, 体重50g)はモズ(約20cm, 体重40g)より大きいなと感じるような感覚
2. オオカラモズは次列風切が白く、翼を閉じている際の白い斑点が非常に広域にわたる。オオモズは初列風切の位置のみ白くなる。
3. オオカラモズは尾羽が異様に長い。
特に1, 2番目の識別点さえ抑えていれば、灰色のモズが現れたときにも、オオカラモズだと自信をもって識別できるはずです。
鳴き声
鳴き声はモズというより、猛禽類のような「キィ キィ」といった声で鳴きます。
鳴き声のバリエーションはかなり豊富ですから、観察した際にはその声も楽しむべきでしょう。
鳥博士のメモ:見つけ方
オオカラモズを国内で見つける一番重要なことは、運でしょう。
それほどまでに、日本国内で越冬する個体数は乏しいのです。
インターネットが発達した現代では、オオカラモズの出現情報が掲載される場合もありますが、
くれぐれもオオカラモズの邪魔をしないよう、執拗に追いかけて観察・撮影することはやめましょう。
警戒心が強い傾向があると感じますので、観察には望遠鏡は必須です。
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