日本はユーラシア大陸からは日本海を隔てて約200kmの位置にある島国です。
その大陸から最も近い地点の1つが、九州地方です。
現在よりも海の位置が低かった氷河期(海の水が今よりも多く氷河として凍りついていたため)には、九州地方は韓国などと陸続きであったこともわかっています。
そうした場所であるためか、九州では大陸では普通種である一方、日本では稀な鳥類というのが何種も生息しています。
その一種がナベコウです。滅多に見ることのできないナベコウの生態を詳しく紹介していきます。
ナベコウの生態:入門編
ナベコウ | Black stoke | Ciconia nigra | コウノトリ目コウノトリ科コウノトリ属
レア度:☆☆☆★★★★★★★(7/10:日本が主な分布域ではない)
見られる季節:冬
見られる場所:九州が多いが、全国でチャンスがある
見られる環境:農耕地、河川沿い
餌:雑食(ほんとうになんでも食べる。鳥を食べることも)
ナベコウは全長が1mにも達するとても大型の鳥類です。
コウノトリの仲間であり、滅多に見られないことから日本のバードウオッチャーの憧れの鳥類の1つであるかもしれません。
特に首回りの羽は美しく、緑色や紫色の光沢が目立ちます。その独特な姿から、他の種と見間違うことはないでしょう。
色彩にオスとメスに違いはありませんが、オスの方がやや大きい傾向があります。しかし野外で見てその差を認識することは難しいでしょう。
ナベコウの分布
ナベコウはユーラシア大陸に広く分布しており、ヨーロッパから中国東部までひろい繁殖域を持ちます(リンク:IUCN分布図)。
そして一部の個体は渡りを行います。
そのなかでも少数の個体が、韓国や台湾で越冬します。さらにさらに少数の個体が、日本で越冬することがあるのです。
日本で越冬する個体数は年によって異なりますがほんの数個体だと考えられ、「迷鳥」という扱いがなされています。
渡来地としては、九州の出水や諫早干拓が有名でしょう。
ヨーロッパで繁殖する個体は、アフリカ大陸まで渡りを行い越冬するようです。
生息環境
日本では主に農耕地で観察することができます。
冬の黄土色の畑のなかで、真っ黒なナベコウは非常に目立つのです。
ヨーロッパでの研究から、ナベコウは人の手が加わっていない疎林や、沼地などを好む傾向があるようです。
一方で大きな湖などはあまり好まないとか。
日本で農耕地にいますが、もしかすると彼らにとってとても良い生息地とは言えないのかもしれません。
全世界での個体数
全世界では24,000–44,000個体が生きていると考えられています。
数だけ見ると少ないようですが、絶滅の直前であるとは考えられていないようです。
ナベコウの生態
魚が主食だが…?
ナベコウの主食は魚ですが、他のさまざまな生き物も食べます。
昆虫、両生類、爬虫類、カエル、カタツムリ、カニなども頻繁に食べられるとか。
さらに、時に鳥類も餌になってしまうことがあるようです。
日本ではアオサギが他の鳥類を襲うシーンがSNSに掲載されたりしますが、やはり大型の鳥類は強いようです。
とても大変な子育て
単独で営巣しますが、地域によっては他の個体の近くで繁殖することもあるとか。
森林中の高い木に営巣するそうです。この点は日本のコウノトリととても似ています。
東ヨーロッパでは、そうした営巣環境が破壊されてしまった場所もあるようですが、
ほかの生息環境を探し出し、巣を作る適応を見せているとか。たくましいですね。
幅1-5mほどの大きな巣を作ります。巣は数年に渡って使用されることが多いようです。
卵の数は3–4個で、約35日抱卵し、70日ほどで巣立っていくとか。3ヶ月ほども子育てをするのです。
つがいは仲が良く、まるで人間のカップルを見ているような気分にさせられることも。
長寿の鳥
3年以内に性成熟をし、子供を残せるようになると考えられています。
記録されている野生下での最長寿命は18歳です。
飼育下では寿命はさらにのび、その最高齢は31歳以上だとか。
名前の由来
ナベコウの「なべ」という語は、すすけた鍋の色から連想された可能性があります。
※ナベヅルの「なべ」は、まさに鍋の色から名付けられたと考えられています。
鳴き声
ナベコウは「キャーキャーキャー」といった声で鳴きます。
コウノトリも「シュー」という空気音を出しますが、この「キャー」という声は、コウノトリでいうクラッタリング(嘴を合わせる音)と同じような
つがい同士のコミュニケーションなどに使われるのかもしれません。
鳥博士のメモ
日本で見られることは非常に稀ですが、
もし見かけた際にはその採食生態など、詳しく観察してみると新しい発見があるかもしれません。
特に九州北部では観察できる可能性が高いので、諦めずに探すことをお勧めします。
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