バードウォッチャー憧れの場所といえば、日本海側の離島でしょう。毎年にように、渡りの時期には様々な珍鳥が島を訪れます。
しかし、なぜそれらの珍鳥は日本海側の島を訪れるのでしょうか?そして有名な離島「飛島」の、他の島と比較した魅力とは何でしょうか?
この記事では、鳥類研究者のトリハカセが
日本海の野鳥の楽園「飛島」を紹介します。
興味のある項目を目次から飛んでくださいね。
渡りシーズンに日本海側の離島がホットな理由
その理由を知るためには、改めて「珍鳥」がどんな鳥なのかを知る必要があります。
珍鳥を特徴づける1つの指標は、季節を問わず日本で見られる個体数が少ないことです。
ではそんな珍鳥の多くはどこに住んでいるのでしょうか?その答えは、ユーラシア大陸です。
大陸を南北に移動する鳥たち
多くの渡り鳥は、種ごとに渡りのルートがおよそ決まっています。
逆に言えば、ユーラシア大陸を南北に移動する鳥が、渡りの時期に海を超えて、日本を通過し南北に移動することは滅多にないのです。
しかし、本当に稀にですが、迷子になったり、突風に吹き飛ばされて、日本に行き着く場合があります。そんな迷子個体を発見できるチャンスがある場所、それが日本海側の離島なのです。
なぜ太平洋側ではないのか?
太平洋側には伊豆諸島や、小笠原諸島がありますが、渡り時期の注目スポットとして焦点があたるのは日本海側の離島です。
有名な島は、石川県舳倉島、山形県飛島、山口県見島、長崎県対馬、北海道天売島などでしょう。
その理由は上述の通りで、日本海側の離島は大陸に近いため、大陸に住む鳥たちとの幸運な出会いに恵まれやすいのです。
とは言え、太平洋側でも珍鳥に出会うことはできます。
トリハカセは伊豆諸島でキマユホオジロ、コウライウグイスに出会ったことがあります。
飛島ってどんな場所?
飛島は、山形県の沖約40km、日本海に浮かぶ小さな島です。
島の周囲は約10kmで、自転者や徒歩で十分に島の隅々まで移動することができます。
島の中央部と、東側にそれぞれ北東ー南西に向かう道があります。
東側の道が生活面のメインストリート、島の中央部の道がバードウォッチングのメインストリートと言えるかもしれません。
それを裏付けるエピソードとして、GWなど大型連休にはすれ違う人の数方が、鳥の数より多い、なんていう伝説も…?!
連休以外であれば、人とすれ違う機会は少ないです。
持ち物:忘れないで、携帯食
島には複数の宿があり、また商店もあります。つまり、手ぶらで訪れたとしても問題はありません。
ただ、美味しい間食やお菓子を食べたいのならば、フェリーに乗船するよりも前に少量購入しておくといいでしょう。
とは言え、ぜひ現地でお買い物をして、飛島経済に貢献したいものですね!
飛島で野鳥観察
飛島の魅力:広すぎず、狭すぎない
飛島の魅力を、近くに位置する舳倉島、粟島と比較します。
舳倉島はとにかく小さく、それほど歩かずにとも珍鳥が探せます。その一方で、1日中島を巡るとなると同じ道を行き来することになります。
粟島は周囲23kmと飛島より広く、目的の珍鳥を探し、宿に戻ってくるのは相当に大変です。
その一方で、飛島は1日で島中をちょうど良く巡ることができ、珍鳥も高頻度で探せるので、足に自信のあるバーダーにとってはベストな島だと言えるでしょう。
飛島で、日本初記録となる鳥を
一度は見つけてみたいものですね!
アクセスと、おすすめの時期
宿泊地:島内には民宿が結構あります。
アクセス:酒田港から定期フェリー「とびしま」に乗って約1時間。冬季には欠航頻度が高くなります。
おすすめの時期:5月中旬、9月下旬ー10月上旬
上記以外のトリハカセが訪れたことのある時期:3月、11月
飛島は、酒田港からフェリー「とびしま」でアクセスすることになります。他の方法はありません。
酒田港から飛島(往路)、飛島から酒田港(復路)の便は、それぞれ1日1本。朝に酒田港を出港し、約1時間で飛島に到着後、お昼過ぎに飛島を出港し酒田港に戻ります。
フェリー「とびしま」の運行状況は、公式ホームページから確認しましょう。毎朝7時頃に出港か欠航かの情報が掲載されます。
春から夏は台風でも来ない限りおおむね出港しますが、日本海が荒れがちな冬には欠航頻度が高くなるので注意です。
フェリー自体が小さめなこともあり、波が高いと船酔いに苦しむことになります。
どんな鳥が見られるのか?
見どころ
島内の森林全域が探鳥地ですが、島の中央部を東西にはしる道沿いにある畑の周辺、島の東部にあるヘリポート(地図内)、島東部にある学校周辺の草原は要チェックです。
そのような開けた環境は、キマユホオジロやシマノジコといった珍ホオジロの主要な出現場所です。
また森林には各種ムシクイ類、国内でほとんど記録のない小型ツグミ類などが観察されることがあります。カラフトムシクイ、キマユムシクイ、カラフトムジセッカ、ヤナギムシクイなどチャンスがあります。
海岸の岩場も要チェックです。ヒメコウテンシなどの珍ヒバリ類と出会えます。
おすすめの時期は?
おすすめの時期は、春の渡り時期(GWの翌週)と秋の渡り時期(10月上旬)です。
数度訪れた感想としては、秋の方が島内の野鳥の密度は高くなります。
珍鳥だけでなく、島中がオオルリやキビタキだらけになったり、マミチャジナイだらけになったりすることも。訪れるたびに、島はその表情を変えてくれるのです。
なんと言っても、秋にはムギマキが大量に通過していく島でもあり、退屈することはないでしょう。
春には、夜に懐中電灯を持って道路を探せば、飛び回るヤマシギや渡り途中のフクロウ類が観察できるはずです。
また、おすすめ時期以外に島を訪れてみるのも楽しいでしょう。
というのも、越冬期にはベニヒワやイスカ、レンジャク類が高密度で越冬する年もあります。
また島の東側から日本海を挟んで望む鳥海山は、何にも変えがたい美しさがあります。
生態学的な観点
飛島は非常に小さいながら、渡り鳥たちの通過点であり、大陸からやってきた「迷子」の貴重な不時着場所と言えることがわかりました。
そうした中継地的な役割に加えて、飛島固有の自然も見逃すことはできません。
例えば、飛島だけに生息する「トビシママイマイ」など、飛島固有の生物が分布していることは意外にも知られていないかもしれません。
日本海に浮かぶという地理的な位置に加えて、このような固有の豊かな生態系が多くの野鳥たちを育み、野鳥の楽園が成立していると言えるでしょう。
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