赤い額と白い体が美しいベニヒワは、滅多に見られる鳥ではありません。
北海道ではチャンスはあるかもしれませんが、本州で観察することは非常に難しいのが事実です。
しかし稀に、本州で観察しているバードウォッチャーがいるのも事実。どういったタイミングで、どんな場所に行けばベニヒワに出会えるのでしょうか?
またとても似たコベニヒワとの識別を含めて、この記事では、ベニヒワについて詳しく紹介していきます。
ベニヒワ入門編
ベニヒワ | Common redpoll | Carduelis flammea | スズメ目アトリ科ヒワ属
レア度:☆☆☆☆☆★★★★★(5/10:冬に稀に見られるが、数が少ない)
見られる季節:真冬
見られる場所:北海道と本州(四国や九州では迷鳥)
見られる環境:主に冷温帯の落葉樹林・混交林
餌:主に穀物食
ベニヒワは体長13cm、体重13グラムほどの小鳥です。
日本で見られる赤い鳥のなかでは特に珍しく、一度見てみたいと願う人は多いのではないでしょうか。
ベニヒワは、主に寒冷地で生きていくことに特化した鳥であり、そのレア度以上に珍しい生態をもっています。
特徴は全身の白っぽい羽毛と、おでこにある赤色のエリアであり、他のほとんどの鳥と見分けることができます。
ベニヒワの生態
基本的に北極圏で生活する
ベニヒワは一言でいうならば「北極圏の鳥」です。
北極をぐるっと取り囲む北極圏の森林を繁殖域としており、アラスカ、ロシア、スウェーデンなど大陸をまたぐ広い範囲がその分布域になります。
しかし冬になると、一部の個体は極寒の北極圏に残る一方、多くの個体は南に向けて移動をはじめます。
どれほど南に向かうのかは、その年の寒さや、餌の量次第だと考えられており、これが日本で見られる個体数が年のあいだで大きく変動する理由です。
つまり、北極圏が大寒波に見舞われたり、彼らの餌である植物の種子が不作の年には、多くの個体が良い生息地を求めて日本など南の森林にやってくるのです。
子育ては種で
また植物が不作か豊作かは、繁殖にも大きな影響を与えます。
なぜなら、ベニヒワは主に種子を子供に与え、雛を育て上げるからです。
ヒワ類は子育てを種子で行う種が多いよ。
植物の種子が不作の年には、ベニヒワは頑張って虫を捕まえ、雛を育てるとか。
あの華奢な嘴ですばしっこい昆虫を捕まえるのは、大変そうですし、非効率にみえますね。
5–6月にかけて高緯度地域の針葉樹林で5–6卵を産卵したベニヒワは、主にメスが雛を育てあげます。
オスはメスが抱卵中にはちょっとだけメスに餌を持って来ることもありますが、基本的に繁殖には参加しません。メスは大忙しの繁殖期を送るのです。
寒さにむちゃくちゃ強い
北極圏アラスカで活躍した写真家の星野道夫氏は自身の著書で、マイナス50度を下回るほど寒くてもベニヒワは囀っている と述べています。
ほとんどの鳥は死んでしまうような寒さですが、ベニヒワは平気で生活しています。
それもそのはず、ベニヒワは雪に潜って寒さを凌いだり、代謝率が他の種に比べて高く、熱を自身でたくさん生産できるのです。
このような寒冷地に適応した生態をもっている一方で暑さには弱く、昭和初期の日本での飼育記録を見ると、東京の夏を生きて越すことはできないのだとか。東京の夏は当時であっても、ベニヒワには暑すぎたのです。
ベニヒワとコベニヒワ
コベニヒワは主にヨーロッパに住んでいるので、日本では激レア!
ベニヒワとコベニヒワの識別は難易度の高さゆえに、図鑑の説明を読んでも自信をもつことは難しいでしょう。
それもそのはず、簡単に言えば、両種の遺伝子は結構似ているのです。
Funkらが2021年にNature communicationsに発表した論文では、ベニヒワとコベニヒワの全遺伝子を比べてみたところ、違いが相当に少ないことを明らかにしました。
それゆえ簡単に識別できないのです。SIBLEY GUIDESが提供するベニヒワガイド(リンク)は、点数付けによるベニヒワーコベニヒワの識別を推奨しています。
リンクの図をご覧ください。(左)尾羽の斑点(中央)脇腹の斑点(右)腰の斑点 の濃さをそれぞれ1–6点で点数をつけます。
そして合計点から種を識別するのです。
ベニヒワ | 両種の中間 (識別できない) | コベニヒワ | |
オス | 3–7点 | 8–13点 | 14–18点 |
メス | 3–6点 | 7–10点 | 11–18点 |
鳴き声
日本で聞く鳴きは「ジィ ジィ」という感じで、濁った音です。マヒワに似ていますが、マヒワよりも声は濁ります。またマヒワは「キョ」という感じの声で盛んに鳴きますが、ベニヒワはそういった音は出しません。
また時折「ピィーリィ」という高い音も発します。この声はかなりマヒワに似ます。若干マヒワの方が音が高いですが、瞬時に聞き分けるには経験が必要です。
日本国内での見つけ方
国内で見るなら寒い場所に行こう!
ベニヒワが見たいからといって、なかなか北極圏へはいけませんね。
国内で見つけられる可能性が高い場所は、とにかく寒い場所です。おそらく日本で見られるベニヒワはロシアから北海道へ移動し、列島中央の山岳域に沿って南に移動していると思います。
それゆえ、北海道全域、日光連山(戦場ヶ原)、長野県の山間部などでは冬になると頻繁にその姿を観察することができます。
ベニヒワは特に針葉樹を好みますから、そういった樹木が生えている場所(標高1,500m以上)を訪れることでベニヒワと出会うチャンスは巡って来るはずです。
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