本州では、冬の草原で特に頻繁に観察できるオオジュリン。
しかし、冬にはたくさんの個体が見られますが、春にはほとんどの個体がいなくなってしまいます。
それもそのはず、オオジュリンは北海道に移動し、繁殖するのです。
今回はそんなオオジュリンの生態を紹介していきます。
オオジュリンの生態:入門編
オオジュリン | Common reed bunting | Emberiza schoeniclus | スズメ目ホオジロ科ホオジロ属
レア度:☆☆☆☆☆☆☆☆★★(2/10:身近ですこし探すと見つかる)
見られる季節:本州では冬、北海道では夏
見られる場所:湿地帯の草原
見られる環境:ヨシなどの草原
餌:主に昆虫食だが、冬には穀物も主な餌となる
オオジュリンは全長は16cmで、本州では主に冬に、北海道では主に夏に見られる小型のホオジロ類です。
本州に住んでいれば、冬にヨシなどにとまりながら、群れで鳴き交わす様子などを目にする機会が多いでしょう。
ヨシの草原では、茎のなかに潜む昆虫や、ヨシの種子を食べて生活しています。
夏には餌は昆虫がメインとなり、繁殖期には個体が密集し繁殖を行います。そして北海道は繁殖地の1つです。
オオジュリンの特徴
オスは繁殖期に頭部が真っ黒な羽に覆われ、口に横に白色の帯が見えることが特徴です。
一方でメスは地味ですが、顔の上部と下部に2本の白色の頭側線が身立つことが特徴です。
冬羽ではコジュリンやシベリアジュリンと酷似しますが、
コジュリンは背中の暗色模様が目立つことや、上下嘴にピンク色の淡色部があります。
シベリアジュリンはより前進の白灰色味が強く(赤色味がかなり乏しい)、嘴が細く、下嘴のみがピンク色である、尾羽が短い(1–2cmほど短いので、プロポーションが異なって見えます)ことなどから識別が可能です。
オオジュリンの生態
北海道が繁殖地
日本周辺域では、オオジュリンは北海道やサハリン、カムチャツカ半島で繁殖を行います。
越冬期の個体数がから想像すると、繁殖地は縄張りがぎっしりと並びそうです。
そして実際、あまりに縄張りが密集する場所では、餌を縄張りの外に出て探しに行くこともあるようです。
繁殖期は5–7月で、一夫一妻で雛を育てます。
そして巣は草の根元や、藪の小枝のなかに置くように作られます。
主な餌は昆虫などの無脊椎動物です。
渡り鳥?留鳥?
北海道では留鳥または漂鳥であり、1年を通してその姿を楽しむことができます。
その一方で、本州では冬のみに見られる冬鳥です。
このような、場所によって渡りを行わない(北海道など)例はヨーロッパでも知られており、
1月の気温が0度を下回る場所では越冬をせず、1月の気温が5度ほどの場所では周年見られるようです。
特に、その気温との関係は積雪と関係があるようで、0度以下に冷え込む場所では雪が降り、
冬に植物の種子を探す地面が埋まってしまうと生きていけないために、渡りをするとか。
今後の温暖化などによって、サハリンなどでも越冬することができるようになれば、もしかすると本州で越冬する個体は少なくなるかもしれませんね。
オオジュリンの分布
実は分布が広く、亜種も多い
オオジュリンの分布は非常に広く、繁殖域はユーラシア大陸全土に及びます。
具体的には、分布域の東の端は日本、西の端はヨーロッパです。
とはいっても、ヨーロッパ全土そして東アジアが主な生息地ですが、中央アフリカなどは一部地域にしか分布しないようです。
亜種も多く、19亜種も記載されています。図鑑などではなかなか見ない数です。
越冬期の生態
越冬期によくみる行動といえば、ヨシなどの縦に伸びる枝に巧みにつかまり、
枝の内側に潜み越冬する昆虫やその卵を探し出す採食行動でしょう。
昆虫などは、鳥類にとって冬の大きなエネルギー源であるため、この採食行動によってオオジュリンは寒い場所でも越冬することができると考えられています。
雪が降らなければ、マイナス30度でも生き抜くことができるとか。
身近で見られるためあまり印象にないかもしれませんが、実はとてもたくましい鳥なのです。
越冬期には昆虫のほか、植物の種子を主に食べています。
全世界での個体数は?
オオジュリンの全世界での個体数は950万-1670万個体だと見積もられています。
あまりに多く、ちょっと想像できないような数ですね。
最も個体数の多い場所はスウェーデンだと考えられており、少なくとも130万羽が繁殖していると考えられているようです。
その一方でスペイン周辺に生息する亜種は絶滅に近づきつつあるとも考えられており、その数が年々減少しているようです。
一方で、日本を含む東アジア地域での正確な個体数はこれまで推定された例はないようです。
頭が黒くなるメカニズム
オオジュリンは繁殖期に頭が黒くなると述べましたが、
これは頭の羽が生え変わるのではなく、頭の羽が摩擦で擦れ、先端のベージュ色の羽がなくなり、
根元の黒色の部分が現れることで頭が黒く染まっているのです。
いちいち新たな羽を生やさずとも繁殖のための羽に変身できる、ホオジロの仲間に見られる生きる術なのです。
江戸時代の認識
オオジュリンの「ジュリン」という和名の語源は「チュイーン」と聞こえる地鳴きです。
しかし「ジュリン」と呼ばれる鳥には、オオジュリンだけでなくコジュリンも含まれていたとか。
江戸時代以降、オオジュリンとコジュリンの識別が体サイズによってなされ、現在の名前「オオジュリン」と分類が確立されたようです。
鳴き声
さえずりはゆっくりとしたテンポで「チョ チューン チィ」といった具合に鳴きます。
地鳴きは「チュイーン」と通る声で鳴きます。ヨシ原で耳を済ませてみましょう。
鳥博士のメモ
オオジュリンは亜種間の生態の違いや、鳴き声の違いも詳しく調べてみると興味深い鳥類です。
その一方で、欧州に比べて日本を含む東アジアの亜種についての研究は遅れており、詳細な知見のほとんどは欧州で得られていると言ってもよいかもしれません。
やはり、趣味としてバードウオッチングがひろまっている欧州は強いな!というところですね。
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