サメは陸に住む我々人間にとって恐怖の対象であり、映画「Jaws(ジョーズ)」をはじめとするメディアにも登場します。
しかし実は、同じく陸に住む小鳥たちにとっても、サメは恐怖の対象であることはあまり知られていません。
今回はそんな、サメと小鳥の意外な関係性についてご紹介します。
記事は結構長いので、興味のある項目を目次から飛んでくださいね。
魚類学者が鳥類の秘密に迫る!
イタチザメの餌を探れ!
ミシシッピ州立大学の魚類学者であるドライモン博士(Drymon)らの研究グループは、
2019年にアメリカの科学雑誌「Ecology」に驚くべき研究論文を掲載しました。
その論文のタイトルを意訳すると「空から落ちてくる栄養をむさぼるイタチザメ」です。
ドライモン博士らは、105個体のイタチザメの胃内容物を調べたところ、なんとそのうち41個体(39%)が鳥を捕食していることを明らかにしたのです。
しかもその内訳を見ると、陸鳥(スズメ目8種、ハト目1種、キツツキ目1種)が多く、水鳥は1種のみ(アメリカオオバン)だったのです。
陸の鳥ばっかり!いったい、なぜ?
サメが陸鳥をたくさん食べる理由
イタチザメが食べていたのは、渡りの途中で海に落ちた鳥たちだったのです。
しかも、イタチザメによる捕食は、秋の渡り時期に集中していることがわかりました。
ドライモン博士らはこの理由について、秋の渡り時期にアメリカ南部で引き起こされる突発的な悪天候が原因ではないかと考えているようです。
というのも、悪天候下で多くの海鳥は海面で休息をとることができる一方、渡り鳥は水面に降り立った後はどうすることもできないのです。
イタチザメは鳥によって生かされている?
このような「空から降ってくる御馳走」は、イタチザメにとってどのような意味があるのでしょうか。
今回観測した41個体のうち、46%にあたる個体は未成熟なイタチザメだったとか。
つまり、捕食の効率がまだ高くない小さいイタチザメにとって、海をただよう小さな渡り鳥の死骸は、彼らの成長にとって非常に貴重な栄養源となっていることが示唆されるのです。
海と陸を渡り鳥がつなぐ意外な関係性は、もしかすると、世界中のさまざまな海の生態系を支える重要なものなのかもしれません。
はっきりした境界を超えて、生態系は繋がっているのです。
参考文献
・Drymon et al. (2019). Tiger sharks eat songbirds. Ecology, 100: 1-4.
・Drymon et al. (2019). Tiger sharks eat songbirds: reply. Ecology, 100: e02870
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