このブログは主に鳥類の生態や特徴、研究結果について記事を掲載しているブログですが、
今回は研究者を目指す若者向けの記事です。中学生・高校生・大学生が研究者になりたい!と思ったら、どんなことを考えれば良いのでしょうか?そんな疑問に答えていきます。
管理人は野鳥の研究で博士号をとり、
現在は研究者をやっています(ただし、まだ駆け出しです)。
長い?短い?研究者人生の概説
研究者になるには、超有名大学に行って、海外で研究しないといけない… と考えるかもしれません。
それは一部正しいですが、そういう道を歩まない研究者はたくさんいます。
幼少期から鳥が好きだった、大学のサークル活動や同好会で興味をもった、大学の卒業研究や大学院から研究対象にした、など鳥の研究をスタートさせるきっかけは様々です。
しかし、20代であれば、いつ興味を持っても研究者を目指すうえで遅くはありません!
では、それぞれの段階では、どんなことを頑張るべきなのでしょうか?
研究者の人生:どんな所属に何年間?
中学校で3年間で勉強、高校で3年勉強し大学受験、大学ではサークル活動をし、大学4年生になると研究室に配属され、研究をスタートする。
そして4年間の大学生活が終わったら、今度は大学院生活が待っています。
2年間の研究生活をする「修士課程(または、博士前期課程)」を修了し、
さらに3年から4年ほどの「博士課程(または、博士後期課程)」を終えると「博士号」を貰えます。
この先は、大学や研究所に正規雇用の研究員、ポスドク(博士研究員・だいたい任期付き)、特任助教(任期付き)、または助教(任期付きまたは終身雇用)として就職し、研究者人生を歩むことになります。
長いように見えて、あっという間です(経験談)!
中学生活でやると良いこと
小学生や中学生の頃に鳥に興味を持った方は、他の大勢の人と比べて、これから長い時間をかけて鳥を知ることができます。
もちろんこの頃から自由研究的な内容で鳥の不思議に迫るのは、とても楽しいでしょう。
しかし私は、この時期に最もやるべき2つのことは 1. 学校の勉強をしっかりマスターすること、2. 野外でも標本でも、自分の興味を持った方法で鳥を見ることだと考えます。
まず、鳥の学問的な研究を進めるためには、大学での学びが不可欠です。そして大学の研究室によって、研究内容はさまざまです。
研究室のホームページを見て、この大学のこの研究室で研究したい!と思う日が来るかもしれません。
しかしそう思っても、学力がなければ、その大学に入ることは叶わなかったりするわけです。選択肢を増やすためにも、頑張って学校の勉強はしましょう。
でも勉強さぼって鳥を見にいきたくなっちゃう気持ちはわかります!
高校生活でやると良いこと
高校でも基本的には学校の勉強を頑張りましょうというのは勿論です(理由は、中学でやると良いことを参照)。
そしてぜひ、勇気を出して、高校3年間のうちに学会やオープンキャンパスに行ってみましょう!
まず学会参加については、高校生は無料なことが多いです。
おすすめは日本鳥学会大会か、日本生態学会大会です。研究ってこんなことやるのかぁと、研究のイメージを膨らませましょう。
また、オープンキャンパスは、研究室見学などもできる場合があります。
さらに野外実習といった大学時代に学ぶことができるカリキュラムも紹介されますので、ぜひ参加してみましょう。
また、若手の鳥の研究者コミュニティもあり、少し勇気をだして参加してみましょう。有志の研究者が運営している鳥類学若手の会では、高校生の会員も募集しているようです。
そうしたグループに所属し、先輩研究者にキャリアの相談をするのも良いでしょう。
勿論、時間を見つけてたくさん鳥を見に行ってくださいね!
鳥の研究ができる大学の選び方
注意すべきことは、どの大学でも鳥の研究ができるわけではありません!!!
大学によっては、鳥の研究ができる研究室がないことだってあります。
そこで役立つのは、日本鳥学会の「鳥の研究ができる大学リスト」です。絶対見た方がよいです。
ただし、記載されている情報が最新とは限りません。
オススメなのは、リストに記載されている研究室の名前や、教授の名前をインターネットで検索し、最新の研究室情報が更新されているかチェックしましょう!
入学したけど、先生が退官して、
研究室がなくなっている!なんてことも…
ちなみに、教授はだいたい65歳で定年です。つまり、憧れの教授が63歳のときに大学に入学しても、研究室配属の3−4年生のときにはその教授は(退職後で)大学にいない… なんてことがあります。
つまりまとめると、① 研究室の最新情報 (ここ1-2年間の活動) の有無、② 研究室を運営している教授の年齢 はかならず調べましょう!
大学生活からは研究生活スタートが基本!
さて、ここまでは「早いうちに鳥に興味をもつようになった人」向けに記事を書いてきましたが、
もしかすると、大学のサークルや、卒業研究で野鳥と触れ合うようになる人は、この記事の読者の中でも多いのではないでしょうか?
大丈夫です、全く遅くありません!鳥の研究は必ずしも「全ての鳥を識別できる必要」はないからです。
鳥の正確な分布や、地域ごとにみられる鳥の種構成なんかを調べたい場合には、鳥を長年見続けてきた学生の強みが発揮されるでしょう。
では、本格的な研究生活が開始する「卒業研究」スタート
までから、大学卒業までをみていきましょう!
大学入学から卒業研究まで
大学に入学したら、まずは入学した学部での学問を基礎から体型的に(そして網羅的に)数年かけて勉強した後に研究室に配属されることになります。
例えば生物学科であれば、生物学について、生態学などのマクロな視点から、遺伝子などのミクロな視点からの見方を学びます。
この際例えば、鳥の行動に興味があるから、遺伝学の授業はテキトーでいいやと過ごすと、後悔します。研究を進めるうえで、さまざまな分野の知識をもつことが後々重要になってきます!!広く深く、学びましょう。
また、この研究室配属までの期間は、授業を頑張りながらのサークル活動など、いわゆる「大学生活」を謳歌できる時期です。
遠くの離島に鳥を見るも良し、友達や恋人とたくさん遊ぶのも良し、勉学に励むのも良しです。
ただし、当たり前ですが楽しみすぎてテストに点数が悪く、単位(合格)を貰えないと進級できないということになります=留年。
離島や海外に自由に行ける貴重な期間です。
留学なんていう選択肢も素敵ですね。
卒業研究から大学卒業まで
研究室への配属時期は大学によって異なりますが、早い大学で3年生、遅い大学では4年生になってでしょう。
研究室配属の際にも、一応選抜があります。例えば「生態学研究室」という研究室に行きたい場合、その研究室には募集人数(国公立なら2人、私立なら5人 とかが一般的?)というのが決まっています。
勉学を頑張っていなかったり、教授陣に「こいつはやることをやらず、不真面目である」という印象をもたれていると、希望する研究室に入れないこともありますので、学部時代の授業や課題などやることはやりましょう!
研究室に配属されると、大学4年の卒業まで、先生と相談して決めたテーマや、与えられたテーマについて、研究を進めていくことになります。
ちょっとした助言としては、研究室配属の際に大学の学部生が思いつく研究テーマは、ほとんどの場合「赤ちゃんの寝言」と言えるかもしれません(例外はごくごくごく稀にあるかもしれませんが)。
当たり前です。教授陣は、数十年にわたって厳しい学問の世界の最先端を見ているのですから(こちらも、例外はありますが)。
もし提案した研究テーマが指導教官に拒否されたとしても、いじけないでください。与えられたテーマや、少し内容が改変されたテーマであっても、一生懸命やれば道は開けます。
また配属時の発想を「赤ちゃんの寝言」とは言いましたが、指導教官との相談を重ねれば、自身の発想をもとに新規性の高い研究を実施できるはずです。いい先生であれば、たくさん議論して、相談して、たくさん吸収しましょう!
大学院生活
4年間の大学生活を終えると、2年間の修士課程、3−4年間の博士課程がはじまります。
ここからは、授業は少しはありますが、研究漬けの毎日になります。
自分で研究分野のわかっていること、わかっていないことを整理し、論文を書いていきます。
成果を国内や海外の学会で発表し、さまざまな研究者から批判(というか指摘)を受け、それをじっくり考え、よりよい研究にしていきましょう。
修士課程と博士課程は、没頭しているうちに数年の時間が
あっという間に経ってしまいます。毎日を大切に。
職業としての研究者
厳しい世界ですが、研究の喜びや、
仲間と議論する楽しみは絶えません。
大学院を修了したあとは、研究者として人生を歩んでいくことになります。
ポスドク、助教授といった形での研究所や大学への就職競争は、厳しいです。鳥類が関連する生態学や進化学、環境学などどの分野でも同様です。ちなみに、論文の本数などの研究業績が就職活動には直結します。
結婚生活を送り、家族を養っていくためにはそれなりの収入が必要です。それゆえ、就職は幸せな人生をおくるうえで必須とも言えるかもしれません。研究人生が始まったら、日々全力で走り続けることが大事なのかもしれません。
就職に関連する話については、今後より詳細な記事を更新していこうと思います。
と厳しい世界のことを話しましたが、日々の研究の成果が出て、自分の仮説が立証されたときの喜びは、なににも勝ると感じています。
大好きな野鳥の世界を深め、新たな学問的な発見をする人生はどうですか?遅すぎることなんてありません!質問などありましたら、本記事のコメントや、InstagramのDMまでどうぞ!
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